出店者インタビュー 知る 2022.10.20 【出店者インタビュー003前編】The Factory of Salumeria 久保田友紀さんナチュラルな食文化の担い手たちに様々なお話を伺う、『出店者インタビュー』第2弾は、The Factory of Salumeria 久保田友紀さんにお話を伺いました。 久保田さんが食品添加物や化学調味料を使わずにソーセージを作ることになった経緯やお店のことを伺ううちに、ソーセージと添加物の話、人に伝えることのややこしさなど、大いに話がはかどりましたので、2回に分けて連載いたします。 もちろん、タベミンで販売中のソーセージについてのお話ありますので、お楽しみに!! 美味しすぎない美味しさってあるじゃないですかタベミン編集部(以下―):以前久保田さんが、SNSに投稿されていた記事などを拝見していたんですが、私たちが扱っているナチュラルワインにおける添加物に対する考え方と似ているなと思うところがあったんです。 久保田友紀(以下久保田)さん:フランスとかのシャルキュトリ(食肉加工品)の世界だと、むしろ添加物を入れないとよくないみたいなものもあるんですよね。 久保田さん:ここからは好みのはなしなんですけど、ケミカルなものが入ってて、じゅわッとジューシーなソーセージとかの美味しさも僕は理解はできるんですけど、それこそワインとかと一緒で、いざ添加物入れずに作ってみた時に、こっちの方がおいしくない?って思う要素があったんです。 なんていうか本来なら抜け落ちてしまうような油分とか水分とかも、化学の力によって閉じ込めてることってできるじゃないですか。それでおいしいって思うんですけど、 なんていうんですかね。 ―:ありますね! 久保田さん:普通のおいしさ。なんていうんですかね。悪魔的うまさじゃない世界のおいしさみたいな。そういうのがあるなと思って。 ソーセージをメインでお店やっていこうと思った時に、毎日でも食べたいなとか、飽きが来ないっていうのでやりたくて。 どっちかだと思うんですよね。 すごい悪魔的な、刺激も強いおいしさで、こってり系のラーメンとか、ダメだってわかってるんだけど、久しぶりに食べたくなっちゃうんだよね、みたいな世界か、 なんかわかんないけど、また食べたくなっちゃう。 久保田さん:それで、ギャップもあるかなと思って。 でも世の中のソーセージ屋さんってそうじゃないですか。 地域密着でやってるちっちゃいシャルキュトリと、大手のなんとかハムさんとかが出してるソーセージって、結局はブランディングの差であって、味は正直似たり寄ったりで。 結局、亜硝酸ナトリウム(注①)入れちゃうと亜硝酸ナトリウム独特の香りっていうのがあって。それがおいしいんですけどね、いわゆるハムフレーバーっていうやつなんですけど、個人的な話ですけど好きじゃないんですよ。あのハム臭っていうのが。 近寄せていくっていうのが、途中で間違ってるなって―:そのあたりが僕らが扱っている自然な作りをしてるワインとも似てるなって思うんです。 久保田さん あんまりナチュラルワインでごりごりバリック(樽の風味)効いてるワインってないじゃないですか。そういう感じだと思うんですよね。 ―それは(大学生の時にお姉さんが持って来てくれた)ドイツのソーセージを食べた時ですか? 久保田さん:あ、いや。それは、もともとおいしいと思ってましたけど、その時は作り方がどうやって作られるのかとか、その添加物が入ってるか云々とかは全く分かってなくて。 自分のお店やってからですね。 添加物がシンプルに体に良くないっていうデータも色々出てるのもあって、そういう面からも入れない方がっていいいう考え方もありますけど、ナチュラルワイン作っている人もそうですけど、無添加だから飲んでほしいじゃなくて。 体に悪いものが入ってないから飲んで。じゃなくて、シンプルにこっちの方がおいしいから飲んで欲しい、食べて欲しいじゃないですか。 で、そうなったときに、本当においしいなって思えたタイミングがあって。 最初はビジネス的な色もあって、添加物を使わないっていうのってええやんとも思って、なんとか添加物を使わない形でああいう大企業さんが作っているような、ジューシーでプリッとおいしいソーセージ作れないかなと思って、結構いろんな方法試して、自分で言うのもなんですけど、上手に作れるようになっちゃって。 これやったらもう、この見劣りしないジューシー感、プリプリ感でいけるんじゃないとか思ってたんですけど。 まあ、まったく同じではないんですけど、それに近寄せていく方向性っていうのが、途中で間違ってるなって思って。 で、本来のお肉のおいしさっていうのが食べられて、ウチでしかできない技法でやるにはどうしたらいいか?ってなってからが、結構長いです。 最初の1~2年は、迷ってて。これでいいのかなみたいな。 ―:それはサルメリアさんを立ち上げた時ってことですか? 久保田さん:そうですね。最初は、添加物は体に良くないよね。使わない方がいいよねっていう感じだったんですけど。 そこから、添加物入れてなくても、入っているようなおいしいソーセージをできるんだよって、そっちに寄せていってたようなもんなんですよ。それの自己矛盾にだんだん気づいていって。 そうじゃなくてさっていう。そもそも本来っていうところですかね。 ―:そう感じ始めたのは、自分でソーセージを作りつつ、そういうものを食べられたきっかけみたいなのがあったんですか? 久保田さん:いや、もうひたすら自分で考えて考えて考えて、そうなりました(笑) 食べれてない、ですね。 ―:食べて、これだ!みたいな感じじゃなくて、作っていくうちに? 久保田さん:そうですね。ずっと自分の好みでああでもないこうでもないって言いながら。2年半くらいでやっと味を決めて今に至るっていう感じですかね。 だから最初の2年半くらいに来てくれたお客さんには、今でも頭あがらないですけどね! ―:そういうリアクションもありますか? 久保田さん:いや、もう覚えてないです。だれも(笑) ―:100人が100人に伝わるって言うと、それはそれで押しが強いっていうか、みんなの印象に残るっていうとそれくらい何かが強いってことなんですかね。 久保田さん:そうですね~。おいしすぎないものって、爪痕は残らないですもん(笑)だから、それでいいのかなって思ってますけど。 ただ、こういう風に深くお話を聞いてもらった時に「実はね~」みたいな。 だからナチュラルワインとかと同じですよ。 僕の友達にいたんですよ。 「むっちゃしんどかったんですけど」って。「やっと久保田さんが言ってはることがわかりました」みたいな。まあ、全部分かったわけじゃないけど、おいしくないワインに出会わないとわからなかったみたいな。 心地いいものって流れていくじゃないですか。 「なんかよくわかんないけど、気持ちいいなぁ」で終わるじゃないですか。「また行きたいね~」みたいな。それが飲食店とかだったら、一番いいんですけど、なかなか難しいですよね。 と、いうことで、タベミンで販売中のソーセージのお話まで行きつきませんでしたが、今回はここまで。次回もぜひお読みいただけたら嬉しいです。 The Factory of Salumeriaさんのソーセージ発売中です!! 注①:発色剤。亜硫酸塩。食肉中のヘモグロビンやミオグロビンと結合して、食肉製品を鮮赤色に保たせる効果があります。アスコルビン酸などの発色補助剤と併用されることが多く、ボツリヌス菌の繁殖を抑える効果もあります。(引用:東京都福祉保健局「食品衛生の窓」) 聞き手:タベルとミンナヴィレッジ 遠矢敬宏 |
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